第12回は『人と協調する』です。
入学式、入社式を迎える季節になりました。学生時代や新入社員だったときのことが、ふと懐かしくなるのもこの頃ではないでしょうか。
思い起こせば、私は音楽大学で声楽オペラを専攻する学生でした。ですが、幼少時からクラシック音楽の英才教育を受けていたわけでも、音楽家になりたかったわけでもありません。かつての親友や仲間とパートに分かれて歌を歌い、そこから生まれるハーモニーの美しさに感動し、一人で歌っているときには得られない、何とも心地よく響き合う調べに心惹かれ音楽を勉強したいと思ったのでした。今ではジャンルを問わず、ジャズやR&B、J-POPに至るまで、様々な音楽を聴くのが大好きです。
ところで皆さんは、音楽には曲を構成する三要素があることをご存じでしょうか。
それは、「リズム(律動)、メロディー(旋律)、ハーモニー(和声)」の3つです。ちなみに、ロゴマークにあるように、私は会社設立以来25年、社是としてもこの3要素を大切にしています。
まず「リズム」。それは絶えずリズミカルな躍動感、前進し続けること。次に、「メロディー」。会社でいえば、主旋律となるミッション、使命感を持ちブレないこと。そして、最後が「ハーモニー」です。
中でも、ビジネス、プライベートを問わず、あらゆる人間関係の中で大切にしていることは、3つ目の「ハーモニー」です。知恵、スキル、情報をつなぐ様々な人との調和があってこそ、新たな成長、創造、進化が生まれると考えるからです。とても一人では成し遂げられないことが、心触れ合い響き合うことで可能になり、未来を切り開くのだと思っています。
しかしときには、不協和音を発してしまいそうな瞬間が、誰にでもあると思います。お互いのペースややり方、経験、価値観などがうまくかみ合っていないときに起こるものです。そんなときには努めて理解し合えるように、半音上げたり下げたりしながら微調整して、協和音になるように心がけています。
例えば、伝達する情報量をプラスしたり逆に減らしたり、朝型の人には朝に、夜型の人には夜にメールを読んでもらえるようにリズムを合わせて出す。すぐに返事をほしい人には、相手目線で早目に返事を出す。わからなくて困っている人には、資料を提供するのはもちろんのこと、その資料のどこを見ればよいかまで示すなど、ほんの一歩、相手に寄り添った思いやりの繰り返しが協和音となり、よい協力関係を育んでいくように思います。
日頃から「ハーモニー」を大切にし、人と協調することで、同じゴールを目指す過程でも、ともに味わえる感動や充実感、人生の喜びが大きく広がっていくのではないでしょうか。
【大森ひとみ, AICI CIM】