第13回は『真摯に謝罪する』です。
国際イメージコンサルタントとしていつも気になるのは、テレビから流れる謝罪会見です。謝罪の言葉を口にしていても、外見・立ち居振る舞い・服装から気持ちが伝わってこないケースが多くあります。
有名な謝罪会見といえば、かつて老舗の料亭の女将が息子に指示するひそひそ話がマイクから伝わり、『ささやき女将』と揶揄されました。女将は視線を上げず終始用意されたメモを読み上げ、語尾をはっきり発言しなかった結果、言葉とは裏腹に心からお詫びをする気がないという印象を与えてしまいました。真摯にお詫びするという気持ちがまず重要ですが、それを伝えるには言葉の内容やトーン・間合いだけでなく、態度・立ち居振る舞い・服装にまで細心の気配りが必要です。謝罪で頭を下げる際、手を机につきながらのお辞儀や、少し頭を下げるだけの角度の足りないお辞儀では、真摯なお詫びの気持ちを伝えることができません。深く頭を下げたら数秒そのままでいて、そしてゆっくり頭を上げることが大切です。数名が並んでのお詫び会見で、トップの人が深々と頭を下げているのに、両隣の人のお辞儀がおざなりになっているというケースも気持ちが伝わりません。
服装は職種によって作業着・スーツ・白衣など様々ですが、言葉と態度、服装から伝わるメッセージが食い違っていた時、視聴者は言葉だけでなく、態度と服装から真意を汲み取ります。特にテレビカメラは正面から撮影するだけとは限りませんので、360度を意識した立ち居振る舞いで会見に臨む必要があります。スーツの場合は、ダークスーツ(黒・チャコールグレー・ミッドナイトブルー・濃紺)を着用し、シャツは無地の白をお勧めします。ボタンダウンの襟はビジネスカジュルになるので避けましょう。ある教育系企業の顧客情報が漏れた際、謝罪会見をする社長のネクタイがレジメンタル柄でした。レジメンタルは英国連隊の旗の柄で、所属のイメージを伝える要素がありますから、慎重に身につけたい柄です。誠実さを伝えるため、立ち上がった時を考慮し、スーツの前ボタンは止めること、派手な靴下や高価な時計を避けることも覚えておくべきポイントです。
私は経営者やエグゼクティブ、営業職向けのコンサルティングでは、リスクマネージメントとして、常に地味な濃紺の無地のネクタイをロッカーに入れておくことをお勧めしています。緊急事態が発生しても、慌てることなく対応することができます。さらに、顔の表情や手足の動きから誤解を招いてダメージを大きくしないように注意し、会場の設営法、謝罪会見を開くタイミング等にも配慮します。そして何より、再び過ちを繰り返さない決意を伝えることが重要です。
神津佳予子 AICI,CIP