2014年度 「礼節のルール25」 第19回

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2014年度 「礼節のルール25」 第19回

第19回は「静けさを大切にする」です。safe_image

私にとって、「静けさ」といえば、京都のお茶室の中。薄暗い茶室に差し込む障子越しの柔らかな日差し。炉の香が聞こえはじめ、炭がぱちぱちと音を立て、湯が沸く音。お抹茶の香りと衣擦れの音。普段の生活の中なら、きっと埋もれてしまう小さな音たちでさえ、ここでは主役です。日常のすべてを忘れ去る、そこはまさに「静けさ」で満たされた小宇宙。五感を研ぎ澄ませ、そこにあるすべてを味わい尽くしたいと思える極上の時間を過ごすことができます。そんな静けさの中、「お茶室から出たら、何百年も前の戦国時代だったりして…。」などと妄想に身をゆだねたり、お軸を書いた人の気持ちに寄り添ってみたりすることもあります。「静けさ」には精神の集中、解き放しを助けてくれるスイッチのような力があるように思います。

そんな夢見心地な私を一気に現実に引き戻すもの、それは茶室の外の音。大きな声で叫び、何か言い争うように通り過ぎる人々。クラクションやバイクの音。それまでの現実離れした豊かな時間はどこかに吹き飛び、茶室の外の現実世界が目の前に広がります。まさに興ざめの一瞬。しばらくすれば、外の騒がしさは収まり、また、「静けさ」が支配する世界に浸ることができます。しかし、その現実に引き戻され、興ざめする一瞬が実にもったいないのです。

人は皆、自分の世界を生きています。茶室で茶道を楽しんでいる人もいれば、観光を楽しんでいる人もいる。商品を急いで配達している人もいれば、お客さんを乗せたタクシーのドライバーもいる。日常では、自分の世界以外のことに意識を向けることはあまりないかもしれません。しかし、私たちの世界は繋がっていることを忘れてはなりません。その壁の向こうにどんな人たちがいるのかと想像する、人を思いやる気持ちが大切ではないでしょうか?「赤ちゃんがお昼寝しているかもしれない」「受験生が勉強しているかもしれない」と想像する。そうすれば自ずと、必要以上に大きな声や音、不必要なクラクションは避けなければならないことに気がつくでしょう。また同時に、自分も誰かの「静けさ」を奪うようなことをしていないだろうかと、自らを振り返ることにもなるでしょう。

自分の世界と相手の世界。自分も「静けさ」を楽しむことがあるように、自分の知らないところで「静けさ」を必要としている人がいるかもしれない。そのような配慮を持って、自分と他者の「静かな世界」を大切にしていきたいものです。

【森内真希, AICI】